石の歌

 「紅楼夢」は、美女がゾロゾロ出てくる小説だと思って読み始めた人は、冒頭から肩すかしをくわされます。いきなり出てきたのは、ぜんぜん美しくない巨石や坊さんたち。なにやらしゃべって、荒野のかなたへ、さっさと消えてしまいます。
 つぎの場面は最初と同じ場所。同じ巨石がデンとそびえていますが、長い年月がたっています。石の表面にはびっしり字が書いてあり、この石が玉に変身して人間世界へ潜入し、体験したことが長々とつづられていました。その一番初めのところで、石の気持ちを述べたのが、この歌です。

    おれは何さ
    単なる石さ
    役立たずの
    ゴロゴロ石さ
    でたらめ山で
    毎日毎日ゴロゴロ
 
    おれはゴネた
    役立たずでも
    せめて浮世で
    遊びたい
    浮世を見てきて
    書いたもんがこれ